税務

【2021年】年末調整のしくみと進め方について、わかりやすく説明します(準備編)

年末調整ハロウィン10

今回は「準備編」として、年末調整のしくみや進め方について、わかりやすく簡単に説明します。
年末調整を深く理解するのに有益だと思う内容を、「参考」に記載しましたが、はじめは「参考」を読み飛ばして、全体像を把握しても大丈夫です。

年末調整のしくみ

年末調整ハロウィン7Photo by Paige Cody on Unsplash

年末調整とは、会社員など給与の支払を受けた人の、その年に納めるべき「所得税」を確定する一連の手続きです。

「所得税」は、1年間(1月1日~12月31日)に受け取った給与などの収入の合計金額をもとに計算します。

ちなみに普段受け取っている「給与明細」や「賞与明細」を見ると、「健康保険料」「雇用保険料」などと一緒に、「所得税」は控除されていますよね。
この給与や賞与から控除されている「所得税」は、その年に納めるべき「所得税」の仮払いのようなものです。

そこで12月に、その年に支払われた給与および賞与の合計金額などをもとに、「その年に納めるべき所得税」を計算します。
そしてその計算した「その年に納めるべき所得税」と、普段給与や賞与から控除されている「所得税」の合計額とを比較してその差額を、12月に支払う給与(もしくは賞与)で還付もしくは追徴を行います。

年末調整の対象となる人

年末帳の対象となるのは、下記①②のいずれにも該当する人です。

①12月に給与もしくは賞与の支払いを受ける人(アルバイト、パートタイマー、その年に中途入社の人も含まれます)
※その年に支払われた給与および賞与の合計額が2,000万円を越える人は、年末調整の対象とはならず、ご自身で確定申告をすることになります。

その年に中途入社した人が、同年中に前職で給与を受けているときは、前職の「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらうことが必要です。これは、前職の給与も合計して所得税を計算するからです。
もし紛失しているときは、前職で再交付してもらうように本人に伝えてください(会社は再交付する義務があるので)。ただ前職が再交付を拒むこともありますが、そのときは本人から税務署に相談してもらえば、税務署から前職に指導してもらうことが可能です。

 

②その年の分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人
※この「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、普通は前年の年末調整のときに提出しているものです(なぜ前年に提出されたものかは、「参考」にて)。

そもそもこの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は年末調整にだけ使用する書類ではなく、毎月の給与や賞与で控除する「所得税」を計算するのにも使用します。
そのため毎年1月の最初の給与の支払いまでに提出してもらう必要があります。
中途入社の人の場合は、入社時に提出してもらいます。
ちなみに複数の会社から給与もらう人は、そのうちの一社にのみに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することができます(複数の会社に提出することはできません)。
また期中に扶養家族(被扶養者)の変更(異動)などがあったときは、その都度再提出してもらいます。
つまり手元にあるものは最新の状況を表しているもののはずです。
ただ実際には扶養家族の変更などがあったにもかかわらず連絡し忘れている人もいます。
そこで、先に書いたとおり翌年1月には翌年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要なので、年末調整のときに前倒して翌年分を提出してもらい、変更(異動)がないか確認をします。
他の書類はすべて当年分を提出してもらいます。余談ですが、厳密には、年末調整はその年の12月31日時点の状況を元に計算することとなっているため、年末調整後に変更(異動)が生じているときは、翌年1月に年末調整のやり直し(「再年調」といいます)をします。

年末調整の進め方

[10月]
従業員に以下の書類を、配布する。

①「令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
※この書類は翌年分です。下記の②③は本年分です。

②「令和3年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告」

③「令和3年分 給与所得者の保険料控除申告書」
※配布するときに以下の点を書面等で伝える。
 ・提出期限(11月15~20日頃が良いと思います。)
 ・上記の③は該当しなくても提出が必要であること。
  (提出を不要とすると、あとで紛失したか未提出かがわからなくなってしまうので。)

 

[11月]
・給与計算システムのアップデートがあるときは実行する。

・従業員から上記①~③の書類およびその証憑(生命保険料控除証明初等)を受け取り、その都度、チェックし問題がなければ給与計算システムに入力。

 

[12月]
・12月の給与(もしくは賞与)の計算をし、そこに年末調整の結果(還付もしくは追徴)を反映させる。

年末調整は12月に支払う給与もしくは賞与で行います。
ただ、賞与は全員に支給されないことがありますので(アルバイトやパートタイマーに支給がないなど)、給与で年末調整を行う方が無難です。

・「給与所得の源泉徴収票(受給者交付用)」を、年末調整を行った給与(もしくは賞与)の明細と一緒に、従業員に渡す。
給与システムで、この「給与所得の源泉徴収票」をプリントアウトすると、一般的には以下の4枚綴りになっていて、それぞれ使用目的は下記の通りです。

 ①「給与所得の源泉徴収票(受給者交付用)」1枚
 ⇒上記の通り、年末調整後に従業員本人に渡す。

 ②「給与所得の源泉徴収票(税務署提出用)」1枚
 ⇒後述の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成するときに使用する。
 ※①と②の違いは、②には個人番号や法人番号の記載があります。
  また②を従業員本人に渡しては駄目です。

 ③「給与支払報告書(個人明細書)」2枚
 
⇒後述のとおり市町村に送る。

 

[1月]
・年末調整に誤りがあったときは、やり直しをする(「再年調」といいます)。

・「所得税徴収高計算書」の作成し、(源泉)所得税を納付。

・「支払調書」および「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の作成し、「給与所得の源泉徴収票」と一緒に税務署に提出。(提出期限:1月末)

・「給与支払報告書(個人別明細書)」および「給与支払報告書(総括表)」を各市町村に送る。(提出期限:1月末)